2013年度前期 第8回 細胞生物学セミナー
日時:7月9日 (火) 17:00~
場所:総合研究棟6階クリエーションルーム
In vitro seed maturation in Brassica rapa L.: Relationship of silique atmosphere to storage reserve deposition
Musgrave, M., Allen, J., Blasiak, J., Tuominen, L., Kuang, A. (2008)
Environ. Exp. Bot. 62: 247-253
単離した長角果におけるアブラナの種子成熟:貯蔵物質の蓄積に対する長角果内の空気の関わり
発達している種子を取り巻く気体環境は、胚の代謝活性、周囲の母体組織の代謝活性および気体透過率、植物体の他の部分とこの微小環境をつなげる物理的な経路などによって維持される独特の環境である。アブラナの長角果の場合は、発達した種子の周りに低酸素を維持し、二酸化炭素を非常に高濃度で蓄積する環境を作る。油糧種子としてアブラナが果たす農業上の役割を考慮すると、長角果の環境により種子内の貯蔵物質の成分と量が調節されるしくみの解明は重要な課題である。この目的のために著者らは生体外での種子の発達を可能にする長角果の培養系を開発した。
受粉後ちょうど11日のアブラナ (Brassica rapa L.) の植物体から切り離した長角果を30 g/lのスクロース、0.25 mg/lのベンジルアミノプリン (BAP)、0.025 mg/lのナフタレン酢酸 (NAA) を含むMurashige Skoog 寒天培地上で200 µmol/m2/s (光合成有効放射) の白色光下で培養した結果、20日間の培養後に種子の成熟が完了した。また、BAPとNAAの濃度を変化させてこれらの条件が長角果および種子に与える影響を調べた。そして細胞化学的局在と生化学的解析によって貯蔵物質の変化を調べた。単離培養を行った場合、種子成熟過程の時間経過は植物体のものと変わらず、完全に発芽できる種子が生産されたが、種子の重量が40%減少し、貯蔵成分としては脂質が減少する一方でタンパク質とデンプンおよび可溶性の糖は増加していた。種子を取り巻く長角果内部の空気を調べるために、ヘリウム中に長角果内の気体を採取する方法を開発し、ガスクロマトグラフィーによってサンプル内の酸素と二酸化炭素の定量を行った。その結果、単離培養された長角果は、植物体上で成熟した長角果よりも酸素が少ないことが分かった。成熟期後期にかけて培養系では二酸化炭素濃度は植物体上よりも高いまま保たれた。植物体についている長角果を採取し気体をサンプリングした後、同じ植物から2度目の採取を行った長角果では、1度目に採取した長角果より、二酸化炭素濃度の平均値は変わらないもののばらつきが大きくなったことから、植物体に長角果が結合していること自体が長角果内の気体環境に影響するということが示唆された。培養系の長角果内においては酸素濃度が低くなるとともに成熟した種子内の脂質含有量が低下したことから、酸素濃度の低さが脂質蓄積を制限しているという結論が支持された。
以前の研究では、環境要因が単離組織培養したアブラナの胚の生長に与える影響を示していた。しかし単離した胚培養のシステムでは長角果の果皮が代謝調節に関わることを示すことはできなかった。種子の成熟過程を通して子房を培養する著者らのシステムでは、気体と植物ホルモンの環境を制御できるため、長角果内の微小環境での胚発達の研究のために有効である。
興味を持たれた方は是非ご参加ください
後藤圭太